「シャルロットがスタジオの外へぼくから逃げていったことがあった。僕は彼女をひきとめようとしてドレスを引っ張ったんだ、彼女を近くにとどめようとして。 ぼくは黄色いコットンのドレスが大好きなんだよ、彼女には長すぎるところがさ。 いまだに、そのレモンイエローが、この右の手のひらに残って消えないんだよ。」(J.D.サリンジャー、『大工よ、屋根の梁を高くあげよ』より)
記憶は、感情と共に眠るように身体に蓄積され、記憶を忘却することは、容易なことではない。ときおり意図せずに、感覚によって呼び覚まされる。
しかしながら今日、わたしたちの身体はさまざまなメディアにさらされ、「現実体験からの記憶」と「メディアからの記憶」の両方が、身体に蓄積されている。
このインスタレーションでは、手を洗うことによって、ガラスの器の中の水に、波紋のイメージが投影される。
波紋の色は、三色の輪で現される。これは、デジタルメディアにおいて使用されるRGBカラーシステムの光の三原色:赤、緑、青である。
このインスタレーションで「手を洗う」という行為は、 幽閉されたメディアからの記憶と感情を、水の中に解放するという体験になる。
「I WASH U」は、メディアテクノロジーからの記憶の清めの儀式なのである。